【自動車保険】人身傷害保険はつけるべきか?|元金融機関の商品開発担当が分かりやすく解説

自動車保険の加入を検討した方の多くは、「人身傷害保険って必要?」と思ったことがあるのではないでしょうか。

対人・対物補償を無制限にすることは悩む人は少ないですが、人身傷害保険はそもそも必要性が分かりにくく、当補償をつけるかどうかで保険料はかなり変わってくるため、多くの人を悩ませるポイントとなっています。

この記事では、大手金融機関で商品開発の経験を持つファイナンシャルプランナーである管理人が、「人身傷害保険をつけるべきか」を分かりやすく解説します。

目次

人身傷害保険とは?

人身傷害保険は、あなたや同乗者が事故でけがをしたとき、治療費・休業損害・後遺障害・葬儀費用などの実際の損害(総損害額)に対して、相手との交渉を待たずに保険金をお支払いする補償です。

超分かりやすく解説

自動車保険には「対人」「対物」という補償があります。

  • 対人賠償…事故で相手をケガ・死亡させたときの補償
  • 対物賠償…事故で相手の物(車・建物など)を壊したときの補償

どちらも「相手のため」の保険です。つまり、この2つ(対人・対物)だけだと、自分の保険からは、自分や同乗者のケガの補償は出ません。

もちろん、もし事故の相手が対人保険に入っていれば、「相手の過失の分」だけ、「相手の保険から」治療費や休業損害が支払われます。

ただし、この場合は次のようなリスクがあります。

  • 相手との示談が終わるまで時間がかかる
  • 相手が無保険だと補償されない
  • 過失割合によっては全額補償されない

といったリスクがあります。

だからこそ、自分の保険で自分や同乗者を守る「人身傷害保険」があると安心、という流れになります。

人身傷害保険のメリット

過失に関わらず補償

相手の保険からは、相手の過失分だけしか支払ってもらえません。

例:損害額1,000万円、あなたの過失30%、相手の過失70%
  → 相手の保険からは 1,000万円 × 70% = 700万円しか支払ってもらえない

残り300万円は自腹になるか、自分の保険でカバーするしかありません。

人身傷害保険なら、過失割合に関係なく、損害額の100%(補償上限額まで)自身の保険から支払われます。

※補償額(補償上限額)はプラン設計によって異なります。(例:1億円、5,000万円、3,000万円などから選択。補償額が大きいほど保険料は高くなります。)

スピーディに補償

相手の保険からお金をもらうには、示談が終わるまで待つ必要があります。複雑なケースでは、示談に数か月〜年単位かかることも……。

人身傷害保険なら、損害額が確定した時点で、相手との示談を待たずに保険金が支払われます

実際に損害が生じているにも関わらず、相手から支払われる金額さえ決まらないと不安が募りますよね。この点、人身傷害保険をつけていれば、治療費や生活費が早く確保できるので安心です。

無保険車にも対応

相手が保険未加入だった場合、相手の保険からは1円も出ません(自賠責に加入していれば、自賠責の補償分は受けれれます)。

この場合も人身傷害保険があれば、自分や同乗者の損害を補償してくれます。

補償範囲が広い

契約プランによりますが、多くの人身傷害保険は「自分の車の事故」だけではなく、自分の車外での事故も対象にできます。

  • 自分の車の助手席に乗っていたとき
  • 友人の車に同乗していたとき
  • 自転車で走行中に車と接触したとき
  • 歩行中に車にはねられたとき

「車内のみ補償」のプランだと上の前半2つだけ対象、「車内+車外補償」ならすべてカバーできます。

歩行中や自転車に乗っている場合など、状況に応じて車内外で補償されるタイプもあります。加入を検討している人身傷害保険のカバー範囲を確認してみてください。

補償額の目安

人身傷害保険の補償額は、3,000万円〜無制限まで設定可能な保険会社が多いです。

家族構成別の必要とされる損害額の目安は以下の通り。

家族構成金額
全体の平均5,691.3万円
夫婦のみの世帯(世帯主40歳未満)7,082.3万円
夫婦のみの世帯(世帯主40歳以上)4,574.0万円
夫婦と末子が乳幼児の世帯7,947.1万円
夫婦と末子が小中学生の世帯7,173.7万円
夫婦と末子が高校生以上の世帯6,477.7万円
夫婦と独立した子どもの世帯5,222.9万円
母子家庭あるいは父子家庭の世帯4,162.5万円
出典
生命保険文化センター「2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2021年12月発行)」

人身傷害保険をつけるべきか?

結論

ほとんどの人は“つける価値が高い”

相手の対人賠償では埋まらない穴(過失相殺・示談待ち・無保険/ひき逃げ)を、人身傷害が実損ベースで素早く埋めてくれるからです。

こんな人は必要性が高い
  • 家族や友人を乗せることがある
  • 通勤・買い物などで日常的に運転/同乗する
  • 徒歩・自転車の外出も多い(※「車内+車外」型ならここまで守れる)
  • 医療・就業不能・死亡保障が厚くない/自営業等で収入ブレが大きい
最小設計でも良いケース
  • 運転頻度が極端に低い貯蓄で数百万円規模の突発費用に耐えられる
  • すでに医療・就業不能・死亡を“かなり厚く”持っている
    →付けるなら「車内のみ」「上限を控えめ」に下げて保険料調整が現実的

他の保険に加入している場合は?

  • 医療保険:入院・通院は出るが、休業損害・将来の逸失利益は弱い →人身傷害で補完
  • 傷害保険:定額給付が中心 →重症・長期化で実際の損害額に追いつかないことも
  • 就業不能保険:発動条件・待機期間あり →初期費用や短期休業は人身傷害が早い

まとめ

人身傷害保険は、対人・対物では埋まらない「過失相殺・示談待ち・相手無保険」といった穴を、自分と同乗者の実損ベースで素早く埋めてくれる“自分のための補償”です。

運転や同乗、徒歩・自転車の外出があるなら基本は付けるのがおすすめです。プラン設計は〈補償範囲(車内のみ/車内+車外)〉と〈上限額(5,000万〜無制限)〉を、生活スタイル・他の加入保険・保険料差で最適化するのがコツ。

運転頻度が極端に低く、医療・就業不能・死亡が厚く、かつ貯蓄で数百万円規模に耐えられるなら上限を抑える選択もアリです。

人身傷害保険は、迷ったら付ける――そのうえで、自分の暮らしに合う最小限の設計へチューニングしましょう。

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